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東京地方裁判所 平成7年(行ウ)240号 判決

原告

株式会社ベルモード

右代表者代表取締役

筒井修

原告

筒井商事株式会社

右代表者代表取締役

筒井修

右両名訴訟代理人弁護士

小野瀬有

被告

東京都千代田都税事務所長

小田博

右指定代理人

友澤秀孝

外二名

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第一  原告らの請求

被告が原告らに対しそれぞれ平成六年九月二六日付けでした新増設に係る事業所税の更正のうち課税標準面積1976.90平方メートル、納付すべき税額一一八六万一四〇〇円を超える部分及び過少申告加算金賦課決定のうち過少申告加算金額二二〇〇円を超える部分を取り消す。

第二  事案の概要

本件は、共有していた二棟の事業所用家屋を取り壊した後、これに代わるべき事業所用家屋一棟を共同して新築した原告らが、新増設に係る事業所税の課税標準となる新家屋の床面積について、旧家屋の床面積のうち原告らの共有持分に対応する部分を控除して申告したところ、被告から、旧家屋の所有者と新家屋の建築主が一致していないから課税標準の特例である地方税法七〇一条の四一第三項の適用はないとして、右控除を否認され更正決定を受けたために、その取消しを求めて出訴した事案である。

一  地方税法(以下「法」という。)の規定

指定都市等は、都市環境の整備及び改善に関する事案に要する費用に充てるため事業所税を課するが(法七〇一条の三〇)、そのうち事業所用家屋の新築に対して課する新増設に係る事業所税については、当該事業所用家屋の建築主が納税義務者(法七〇一条の三二第一項)、新築に係る事業所用家屋の床面積が課税標準である(法七〇一条の四〇第三項)。そして、ここにいう事業所用家屋とは、家屋の全部又は一部で人の居住の用に供するもの以外のものをいい(法七〇一条の三一第一項七号)、家屋とは固定資産税の課税客体としての家屋と同義である(同項六号)。また、建築主とは、家屋に関する工事の請負契約の注文者又は請負契約によらないで自らその工事をする者をいう(同項八号)。

事業所用家屋の所有者が当該事業所用家屋を取り壊した場合において、指定都市等の区域内において当該取壊しが行われた事業所用家屋(以下「従前の事業所用家屋」という。)の所有者が建築主である事業所用家屋で当該従前の事業所用家屋に代わるものと認められるものの新築が、当該取壊しが完了した日から二年以内にあったときは、新築に対して課する新増設に係る事業所税の課税標準となるべき床面積から従前の事業所用家屋の政令で定める床面積に相当する部分を控除する(法七〇一条の四一第三項、以下「本件規定」という。)。

また、事業所用家屋の新築が従前の事業所用家屋の所有者とそれ以外の者との共同行為であり、かつ、右共同行為による新築に係る事業所用家屋の部分について従前の事業所用家屋の所有者が区分所有権を単独で有することとなる場合には、右区分所有権を有することになる部分に相当する事業所用家屋の新築を従前の事業所用家屋の所有者が単独で行ったならば本件規定により控除されることとなる面積を、新築に対して課する新増設に係る事業所税の課税標準となるべき床面積から控除する(地方税法施行令(以下「法施行令」という。)五六条の七一第一項)。

二  当事者間に争いのない事実等(なお、書証によって認定した事実については、適宜書証番号を掲記する。)

1  原告株式会社ベルモード(以下「原告ベルモード」という。)と筒井君子は、別紙物件目録一記載の事業所用家屋(以下「旧家屋一」という。)を、同目録記載の持分のとおり共有していた。

2  原告筒井商事株式会社(以下「原告筒井商事」という。)と筒井康、筒井修及び喜多洋子は別紙物件目録二①記載の事業所用家屋(区分建物の専有部分)を同目録記載の持分のとおり共有し、原告筒井商事は同目録二②及び③の事業所用家屋(区分建物の専有部分)を所有していた(以下右各専有部分を含む一棟の家屋を「旧家屋二」という。)。

3  原告ベルモード及び原告筒井商事(以下両者を併せて「原告ら」という。)は、旧家屋一及び二を取り壊した。各旧家屋は、平成四年一一月二〇日取壊を原因として滅失登記がされた。(甲二、三、四号証)

4  原告らは、建築主として別紙物件目録三記載の事業所用家屋(以下「新家屋」という。)を共同で新築(以下「本件新築」という。)し、新家屋につき平成六年五月一七日薪築を原因として原告らの共有に属する旨の保存登記をした。(甲一号証)

5  原告らは、平成六年七月一八日、被告に対し、連帯納税義務者として、本件新築につき新増設に係る事業所税の納付申告をした。右申告において、原告らは、本件新築には本件規定の適用があるとし、新家屋の床面積から、各旧家屋の床面積のうち原告らの持分に対応する部分を別紙床面積の計算書のとおり控除した。

6  被告は、平成六年九月二六日付けで、各旧家屋の床面積の控除を否認することなどを理由に、原告らに対し、新増設に係る事業所税につき課税標準面積5132.73平方メートル、納付すべき税額三〇七九万六三〇〇円とする更正及び過少申告加算金二二五万一六〇〇円の賦課決定(以下「本件各処分」という。)をした。

7  原告らは、平成六年一一月九日ころ、東京都知事に対して本件各処分に係る審査請求をしたが、東京都知事は、平成七年七月二〇日、右審査請求を棄却するとの裁決をした。

三  争点

本件の争点は本件新築の場合に本件規定の適用があるか否かであるところ、これに関する当事者双方の主張の要旨は以下のとおりである。

1  被告の主張

新増設に係る事業所税は、事業所用家屋の新築又は増築が事業所等の都市への集中の条件を作り出し、結果として都市財政需要を引き起こすこととなるので、その原因者である建築主に対し、これらの建築行為を課税客体として一回限り課するものとして創設された目的税であり、行政需要の喚起の度合を課税標準である新増設に係る事業所用家屋の延べ床面積によって量るなど、徹底した外形標準課税制度を採用している。

そして、本件規定は、右のような新増設に係る事業所税の趣旨にかんがみ、納税義務の重複を回避するため、従前の事業所用家屋の取壊しが行われてから二年以内に当該従前の事業所用家屋に代わるものと認められる事業所用家屋の新築又は増築が行われた場合には、課税標準の特例として、増加した事業所用家屋の床面積についてのみ負担を求めれば足りるものとしている。

もっとも、納税義務の重複を回避するという趣旨と、従前の事業所用家屋の建築主が誰であったかを確認することは時の経過により困難になるとの課税技術上の問題を併せて考慮し、本件規定は、新増設に係る事業所税が従前の事業所用家屋の建築主からその所有者に転嫁されるものと擬制して、従前の事業所用家屋の所有者が建築主である場合に限って、課税標準の特例が認められるものと規定したのである。

ところで、事業所税にいう家屋とは、固定資産税における家屋をいい、具体的には不動産登記法上の建物とその意義を同じくするものであり、従って建物登記簿に登記されるべき建物をいうのであるが(地方税法及び同法施行に関する取扱についての依命通達(市町村税関係)第三章第一の二)、不動産登記法上の取扱においては、建物とは屋根及び周壁又はこれに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものをいうから(不動産登記事務取扱手続準則第一三六条第一項)、本件規定にいう「事業所用家屋」とは一棟の家屋を指すものである。

よって、例えば、甲が所有する事業所用家屋と、乙が所有する事業所用家屋の二棟を取り壊し、これに代わる事業所用家屋一棟を甲乙が建築主として共同で新築した場合でも、取り壊された従前の事業所用家屋二棟をまとめて「従前の事業所用家屋」として取り扱うことはできないし、右従前の事業所用家屋のそれぞれについては、その所有者(甲又は乙)と新築された事業所用家屋の建築主(甲及び乙)とは一致していないから、結局右事例においては本件規定を適用することはできないのである。

もっとも、右のような場合、甲及び乙が従前の事業所用家屋についてそれぞれ単独で建替えを行ったとすれば本件規定の適用があることとの均衡や、従前の事業所用家屋の所有者とそれ以外の者とが共同で建築を行うことが都市部において一般的趨勢となっていることから、本件規定と整合性が保ち得る範囲で右のような場合に従前の事業所用家屋の床面積の控除を認めるべく、法施行令五六条の七一の規定が設けられたのである。

すなわち、新築された事業所用家屋の所有形態が区分所有となり、従前の事業所用家屋の所有者が区分所有権を単独で有することとなる場合には、新増築に係る事業所用家屋の部分(専有部分)が特定できることから、外形標準課税制度との整合性が図れるとともに、専有部分を従前の事業所用家屋の所有者が単独で建築したものとみなすことにより、本件規定における従前の事業所用家屋の所有者と建築主との同一性をも満たすこととなるので、かかる場合に限って、課税標準の特例を認めることにしたのである。

他方、新築された事業所用家屋の所有形態が共有となった場合には、新増築に係る事業所用家屋の部分が特定できず、各共有者がそれぞれ単独で建築したものとみなすこともできないので、右施行令の適用範囲に含めなかったものである。

これを本件についてみるに、旧家屋一の所有者は、原告ベルモード及び筒井君子であり、旧家屋二の所有者は、原告筒井商事、筒井康、筒井修及び喜多洋子であるのに対し、新家屋の建築主は原告らであって、旧家屋一又は二の所有者と、新家屋の建築主とが一致していない。

したがって、本件新築には本件規定の適用はないのである。

2  原告らの主張

新増築に係る事業所用家屋に対して事業所税が課される根拠は、右新増築によって新たに増大する行政需要に対応するため、新増築をした事業所用家屋の建築主に対して一回限りその負担を求めるという点にあるから、従前の事業所用家屋を取り壊して新増築を行った場合には、従前の事業所用家屋の床面積相当分を課税標準面積から控除できるのは当然の帰結であり、本件規定の解釈・適用も、以上の趣旨に照らしてされなければならない。

ところで、本件規定の適用要件たる従前の事業所用家屋の「所有者」という用語についてみるに、所有者の概念に通常包含されるべき共有権者や区分所有権者について、本件規定が単独所有権者と区別して除いているものとは解し得ないし、前記のような本件規定の趣旨からしても、従前の事業所用家屋の所有形態によって本件規定の適用の有無を区別する実益はない。

次に、本件規定における、新増築された事業所用家屋の「建築主」についてみるに、右建築主は、具体的には新増築された事業所用家屋の表示登記及び保存登記上の所有権者となるべきところ、共同建築の共同建築主間の所有関係についても本件規定は格別の制約をしていないから、新増築された家屋について共有関係も包含する趣旨である。

また、法施行令五六条の七一第一項が、従前の事業所用家屋の所有者とそれ以外の者との共同新増築の場合等には、従前の事業所用家屋の所有者が新増築された事業所用家屋について有する権利は区分所有権でなければならないと限定したことからすれば、その反対解釈として、従前の事業所用家屋の所有者同士の共同新増築の場合等には、その所有形態が共有であっても本件規定の適用の対象となるものである。さらに、法施行令五六条の七一第二項が、従前の事業所用家屋の所有者同士が新増築された事業所用家屋について一つの区分所有権を共有する場合にも、本件規定による課税標準の特例の適用があるというのであるから、これと同じ法理により、新増築された事業所用家屋を従前の事業所用家屋の所有者同士が共有する場合には、本件規定の適用があるのである。

そして、本件新築においては、旧家屋一の共有持分の所有者である原告ベルモードと、旧家屋二の一部について区分所有権者であり、一部について区分所有権の共有者である原告筒井商事が、それぞれ各旧家屋を取り壊した上、共同建築主として旧家屋に代わるものとして新家屋を建築し、これを共有したのであり、しかも、原告らは、別紙床面積の計算書のとおり、旧家屋につき、自己の持分に対応する床面積部分のみを控除対象としたのである。

したがって、新増設に係る事業所税の課税の趣旨及び本件規定の文言に照らしても、本件新築が本件規定の適用を受けることは明らかである。

第三  争点に対する判断

一1  本件においては、課税標準の特例である本件規定が本件新築に適用があるかが問題になっているが、本件規定によれば、その適用対象となるのは「従前の事業所用家屋の所有者」が、その取壊しの後に建築主となってこれに代わる事業所用家屋を新築した場合であるから、右「従前の事業所用家屋の所有者」の意義について検討する。

乙一号証によれば、事業所税のうち事業所用家屋の新増設に係るものは、事業所用家屋の新増築によってもたらされるであろう都市の行財政需要の拡大に対処して都市環境の整備、改善に要する費用に充てるために創設された目的税であると認められるが、同時に、行財政需要そのものを数量化して課税の対象とすることは困難であることから、その原因となる事業所用家屋の新増築という事実に着目して、原因者である建築主に対して新増築ごとに新増築に係る事業所用家屋の床面積を課税標準として課税関係を発生させるものであって、納税義務者は赤字決算であってもその義務を免除されないなど、納税者間の形式的平等が図られ、法治主義が厳格に妥当すべき租税制度の中でも外形標準的な性格が特に強いことも認められるところである。例えば、甲が自ら建築した事業所用家屋を取り壊して乙が同一の事業所用家屋を新築したときは、行財政需要に量的変化はなくとも乙の新築は課税対象とされることになるのである。

しかしながら、同一の建築主が一定期間内に従前の事業所用家屋の代替と認められる家屋を再築する場合には、その限度で重ねて課税しないことに合理性がある。これが本件規定の趣旨であると解されるから、従前の事業所用家屋の床面積の一定部分を控除すべきなのは、本来「従前の事業所用家屋の建築主」が事業所用家屋を新増築した場合であるはずだが、本件規定がそうした文言を用いていないのは、課税技術上、従前の事業所用家屋の建築主として従前の事業所用家屋の新増設に係る事業所税を現実に負担した者が誰かを確知するのは困難な場合もあることを慮って、右税が最終的には従前の事業所用家屋の所有者に転嫁されるものと擬制したものと解すべきである。そうすると、「従前の事業所用家屋の所有者」は、本件規定において従前の事業所用家屋の建築主と同視されることによって、課税標準面積の計算において特例の対象とされることになる。

ところで、既にみたとおり、事業所用家屋とは家屋の一部を指称することもあるが、「所有者」とは一物について所有権を有する者を指すのであるから、取壊しの対象となる事業所用家屋が家屋の一部であったとしても、その所有者とは当該事業所用家屋を含む一棟の家屋の所有者と解すべく、また、新増築に係る事業所用家屋の「建築主」とは法が建築主の意義につき建築基準法二条一六号にいう建築主とほぼ同一に定めていること(七〇一条の三一第一項八号)及び増築に関する法の定義(同項六号)などからして、「一棟の家屋」の建築主を指すことが明らかである。

したがって、事業所用家屋である従前家屋又は新築家屋が複数棟存在する場合には、それぞれ対応する一棟の家屋相互間について、従前家屋の所有者と新築家屋の建築主との同一性を判断すべきこととなるのであって、従前の事業所用家屋を所有する甲がこれを取り壊して乙と共同で新たに事業所用家屋を新築したとしても、従前家屋の所有者と新築家屋の建築主との間に同一性を認めることはできず、また、甲及び乙が各自所有する従前の事業所用家屋を取り壊して共同で新家屋を建築したとしても、各従前家屋の所有者と新家屋の建築主との間に同一性を認めることはできないのである。

2  これに対し、原告らは、新増設に係る事業所税の課税の趣旨及び「所有者」「建築主」につき法が所有形態、共同建築を問題としていないことから、従前の事業所用家屋を取り壊した場合に、その床面積をこれに代わり新増築された事業所用家屋の床面積から控除するという本件規定は、かかる課税の趣旨の当然の帰結であるから、特にその適用を除外する規定がない限り、本件規定の適用を広く認めるべきである旨主張するようである。確かに、法は従前家屋の所有形態(単独所有、共有)を問うものではなく、また新築家屋については建築主を問題とし、新築家屋の所有形態を問うものではないから、従前家屋が共有であったり、共同建築に係る新増築家屋が共有となることから直ちに本件規定の適用が排除されるものではなく、また、事業所用家屋の新増築による将来の行財政需要の増大に対処するという法の目的のみに照らせば、従前家屋の所有者と新築家屋の建築主との同一性を問わずに両家屋の物理的性状の重複のみを問題とする方法も、あるいは従前家屋の所有者と新築家屋の建築主との同一性を厳密に問うことなく従前家屋の所有者が建築主に加わっている限り従前家屋の事業所床面積を控除するという方法も、立法論としては右目的に背馳するものでもない。しかしながら、右に説示したとおり、現行法の採用した課税要件に従えば、本件規定が適用されるのは、従前の事業所用家屋のうちその所有者が新増築された事業所用家屋の建築主と同一人であると認められる場合に限定されていることは明らかである。

また、原告らは、従前の事業所用家屋の所有者とそれ以外の者との共同新増築の場合の要件を法施行令五六条の七一第一項及び二項が定めていることからすれば、複数の事業所用家屋の所有者が従前家屋を取り壊して共同で新増築をする場合には、本件規定が当然に適用される旨主張する。しかしながら、法施行令五六条の七一第一項は、その適用対象について、本件規定にいう従前の事業所用家屋の所有者等(以下「特例対象法人等」という。)が他の者と共同で新築した事業所用家屋についても、特例対象法人等が単独で区分所有権を有する場合に限って、右区分所有権を有することとなる事業所用家屋の新増築を単独で行ったものとして、同条の七一第二項は、特例対象法人等が区分所有の目的となる専有部分の一を共有する場合に限って、右共有に係る事業所用家屋の新増築を共同で行ったものとして、それぞれ法七〇一条の四一第一項ないし第四項又は第七項の規定による床面積の控除を行うというものである。なお、右施行令の規定は、特例対象法人等と「当該」特例対象法人等以外の者との共同行為について規定しているのであるから、本件規定にいう従前の事業所用家屋の所有者と、その者以外の従前の事業所用家屋の所有者との共同建築をその対象から除外していないことはその文理から明らかであって、原告らの主張する「反対解釈」を採用することはできない。したがって、このような共同建築について法施行令の右規定が適用されるのは、各特例対象法人等が新築家屋のうち区分所有の目的となる専有部分を単独で所有し又は共有する場合に限られるのであって、さらに、その適用がある場合でも、新築家屋のうち事業所用家屋とされる当該専有部分について「単独建築」又は「共同建築」を擬制するにすぎず、従前家屋の所有者と新築家屋の建築主との同一性という要件の変容を含むものではないのである。

3  以上の理解を前提にして、本件新築について本件規定の適用があるかをみるに、旧家屋一の所有者が原告ベルモード及び筒井君子であり、旧家屋二の所有者が原告筒井商事、筒井康、筒井修及び喜多洋子であったこと、並びに新家屋の建築主が原告らであったことは当事者間に争いがないのであるから、いずれの旧家屋についてみても、新家屋の建築主との一致がないことは明らかである。そうすると、いずれの旧家屋についても、その所有者が建築主となって新家屋を新築したものと認めることはできないから、その余の点について判断するまでもなく、本件新築に本件規定の適用はないことに帰する。そして、各旧家屋を併せて「従前の事業所用家屋」と解することができないことは既に説示したとおりであるから、仮に本件において、原告ら以外の旧家屋の所有者が、その取り壊し直前にその共有持分を放棄した結果、その取り壊し時において旧家屋一について原告ベルモードの、旧家屋二について原告筒井商事の単独所有となっていたものと考えたとしても、やはり各旧家屋の所有者と新家屋の建築主との一致はなく、本件規定の適用もないことになるのである。

二  また、新家屋は区分所有に係る家屋ではないから、法施行令五六条の七一第一項及び同第二項の適用の余地もない。そして、甲九号証及び弁論の全趣旨からすれば、本件各処分にはその余の違法な点も認められないから、本件各処分は適法である。

三  結論

以上のとおりであるから、原告らの請求はいずれも理由がないので棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官富越和厚 裁判官竹野下喜彦 裁判官岡田幸人)

別紙〈省略〉

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